前回は「団体信用生命保険とは?」「定期保険とは?」についてお伝えしました。
今回は「団体信用生命保険と定期保険の違いを正確に説明できますか?(後半)」をお届けします。
▼団信と定期保険の大きな違い
ここでポイントになってくるのが、「団体信用生命保険はお金が入金されるわけではない」ということです。
この保険は、あくまで借り入れの残高を清算するためのものであって、事業運転資金や他の用途に使うためのキャッシュを生み出すものではありません。
その為、資金の柔軟性に関して言えば、定期保険の方が圧倒的に優れています。
例えば、事業で急に資金が必要になったとき、定期保険があれば、その保険金を事業資金として活用できる可能性があります(もちろん、定期保険の保険金は保険加入者が亡くなった場合に限られますが)。
しかし、団体信用生命保険では、その保険金は借り入れの残高に充てられるだけで、事業の資金として直接活用することはできません。
保険の恩恵を受けるのは現経営者ではなく後継者です。現経営者に万一の事があった場合に、会社がどのような状態かは分かりませんから、柔軟に対応できる状況を準備しておくことが非常に重要です。
経営者として事業融資を受けるときには、ただ単に「保険が付いているから安心」と思うのではなく、「どのような保険が付いていて、その保険が事業や家族にとってどんなメリット・デメリットをもたらすのか」をしっかり理解しておくことが大切です。
団体信用生命保険は、安心して借りるための一つの手段で保険料も定期保険と比較すると安いですが、事業の将来を考えたときには、資金の柔軟性も考慮に入れた保険選びが求められます。
▼団体信用生命保険だと納税資金が準備できない
保険募集人の方から以前にこんな質問を受けました。
「団体信用生命保険だと資金が入金されないということは納税資金の準備ができないという認識になるのでしょうか?生命保険で借入金を返済するための保障額は約1.5倍の保障が必要だと思いますが、団体信用生命保険であれば借入金が相殺されるだけなので、法人税分は事業保障がいずれにしても必要だと思っていましたが、この認識であっていますでしょうか。」
この質問の通り、借入返済に必要な資金を計算するとき、法人税も考慮に入れる必要があります。
たとえば、1億円の借入金の保障を検討する場合、保障額は「1億円」とだけ考えるわけではありません。
保険金が入金されると、もちろん課税対象となり借入金を返済しても【損金】として認められません。
借入金額を0.7で割る(1.5倍乗じて保障額を算出する事と同義)必要があります。
(30%の納税を想定。1億円の借り入れの場合、1億円÷0.7≒1億4300万円の保障が必要)
繰り返しになりますが、団体信用生命保険については、直接入金があるわけではありません。
会社側とすれば借入が消えるイメージです。
そうなる雑収入ではなく、「債務免除益」が特別利益(もしくは営業外収益)で計上されるため、結果として利益計上されます。
その為、先ほど質問の答えとしては、団体信用生命保険で借入金保障を仮に準備していたとしても、別途で納税分の保障を確保しておく必要があるということです。
借入金保障を考えるケースでは、団体信用生命保険の知識が求められることが多いですから、記事に書かせていただいた知識については身につけておきましょう。
次回は【企業のフェーズ毎のリスクについて】を2回に分けてお送りします。
楽しみにしていてください!
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