前回も書きましたが、事業保障対策において、「借入金」は大きなテーマとなります。
金額も大きくなることが多いですし、後継者にとって連帯保証債務の問題は家族も巻き込む話になりますので、慎重に取り扱う必要があります。
事業保障対策をご提案するにあたって【会社の方向性】をヒアリングする必要があります。
事業を継続する場合と事業を清算する場合では、必要な資金が異なってくる為です。
ただし【借入金清算資金】については両者ともに共通です。
5つのポイントがありますので、この記事では前回に続き、残り2つのポイントを解説していきます。
▼④連帯保証債務の有無確認
金融機関の借入については、「連帯保証有」と「連帯保証無」が存在します。
近年では連帯保証無の借入も増えてきており、連帯保証債務の有無については決算書を見ても判断できない為、経営者へのヒアリングが必要です。
連帯保証無の場合は親族外承継であっても連帯保証債務の引継ぎは発生しないため、保障は不要と判断されることもあるからです。
連帯保証債務を語るにあたって、「経営者保証に関するガイドライン」についての知識を持っておくことは必須ですので、簡単にこの記事で触れておきます。
▼経営者保証に関するガイドラインについて
「経営者保証」については、経営者による思い切った事業展開や事業再生、事業承継を妨げる要因になっており、これらの課題の解決策として、全国銀行協会と日本商工会議所が「経営者保証に関するガイドライン」を策定しました。
「中小企業、経営者、金融機関共通の自主的なルール」という位置づけである為、法的な拘束力はなく、経営者保証を解除するかどうかの最終的な判断は、金融機関にゆだねられます。
法的な拘束力はないものの、実際に金融機関で勤務経験がある私の意見としては、基本的にこのガイドラインが経営者保証を外すかどうかの主要の判断材料になっていました。
具体的には下記の3要件を将来に亘って充足する体制が整備されていることが判断材料とされています。
1)資産の所有やお金のやりとりに関して、法人と経営者が明確に区分・分離されている
2)財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能である
3)金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されている
▼⑤法人税を考慮する必要あり
借入返済に必要な資金を算出する際には「法人税」の考慮が必要です。
仮に1億円の借入の保障を検討する際に、保障額が単純に「1億円」になるわけではありません。
入金された保険金に対しては課税されますが、借入を返済したとしても【損金】としては処理されないからです。
このようなケースでは、金融機関からの借入額に対して、0.7で割ると(30%の納税と仮定)適切な保障額が算出されます。
(借入が1億円のケースだと、1億円÷0.7≒1億4300万円の保障が必要です)
事業保障における「借入金」のヒアリングで、上記のヒアリングが出来れば、経営者の方からの信頼は厚くなりますので、記事を参考に一度ヒアリングしてみてください。
次回は、「事業清算時の考え方について」について2回に分けてお伝えします。お楽しみに!
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