前回は、「株主総会で会社の重要事項を決定する」「自社株とは」について解説しました。
今回は続きを説明していきます。
▼生前金庫株のメリット(後継者の議決権確保)
社長在任中に取り組む自社株対策の一環として、生前に金庫株化を行うことがあります。
これは、会社経営に影響を及ぼす可能性のある外部株主や親族株主から株式を買い取ることで、後継者が会社を代表して経営しやすい環境(議決権の保有割合)を整えるものです。
この方法により、経営権争いのリスクを事前に回避することができます。
▼生前金庫株のデメリット(みなし配当所得)
「配当金にかかる税率は一律20.315%」と誤解されることがありますが、実際には、上場していない会社に自社株を売却する場合、その所得は総合課税となり、最高で55%の税率が適用されることがあります。
多額の税負担が発生しないよう、十分に注意が必要です。
▼相続金庫株のメリット(納税資金の確保が可能)
「相続金庫株」の最大のメリットは、後継者や親族が自社株を相続した後に、その株式を会社に買い取ってもらうことで、相続税の納税資金を確保できる点です。
後継者が相続人である場合、相続の発生から3年10か月以内に株式を発行会社に売却すれば20.315%の課税となる「みなし配当課税の特例」が適用されます。
▼相続金庫株のデメリット(財務体質と与信状況の悪化)
会社が自己株式を取得(金庫株化)するためには現金が必要となります。
その結果、取得資金の分だけ現預金が減少し、自己資本比率が低下することになります。
自己株式の取得による影響を考慮し、事前に買取り資金の準備や、取引先や金融機関への説明が必要となります。
▼分配可能額の範囲内での買い取りが必須(会社法第461条)
会社法では、会社が自社株を株主から買い取る際に財源規制が設けられています。
無制限に自社株を買い取ることが可能であれば、会社の資産が流出してしまいかねません。
資金に余裕のない会社が自社株を買い取って金庫株化すると、資金が流出し、会社債権者に予期しない損害をもたらす恐れがあります。
これを防ぐために、“買い取る時点”の“分配可能額の範囲内”でのみ、自社株の買い取りが可能となるよう規制が設けられています。
分配可能額(買取り可能額)は、基本的に剰余金の額と同じになります。
資本金については、配当が許されておらず、資本準備金も、資本金の減少を防ぐ役割があるため、配当は許されません。
つまり会社が株主に配当できるのは、資本金と準備金を除いた金額(=剰余金)になります。
▼保険提案の実務でどのように金庫株が関係するのか
保険提案の実務において、金庫株を活用する方法としては、企業が株式を買い取るための資金準備や、相続発生時の納税資金確保を目的とした生命保険契約が考えられます。
例えば、経営者が保有する株式を会社が買い取る場合、その資金を予め生命保険で準備しておくことで、スムーズな金庫株化が可能となります。
また、相続時に後継者が株式を相続し、その後会社に売却して納税資金を確保する際にも、保険金を活用することで、後継者が負担なく相続を進めることができます。
次回は「中小企業を支える経営セーフティ共済に改正(前半)」について2回に分けて解説していきます。
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